変形性膝関節症を手術せずに治す!整形外科でできる保存療法を解説

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「膝が痛くて歩くのがつらい」「階段の上り下りが苦痛」といった症状でお悩みではありませんか?もしかしたら、それは変形性膝関節症かもしれません。変形性膝関節症は、加齢とともに膝関節の軟骨がすり減り、炎症や痛みが生じる病気です。進行すると日常生活に支障をきたす場合もあります。 このページでは、変形性膝関節症の症状や原因、進行段階を詳しく解説します。さらに、手術をせずに痛みを和らげ、膝の機能を改善する整形外科での保存療法について、薬物療法(内服薬、ヒアルロン酸注射、ステロイド注射)、リハビリテーション(運動療法、物理療法)、装具療法(膝サポーター、足底板)、生活指導(体重管理、運動指導)など、具体的な方法を分かりやすくご紹介します。それぞれのメリット・デメリットも理解することで、自分に合った治療法を選択できます。また、よくある質問や整形外科選びのポイントも掲載しているので、安心して治療を始められるようサポートします。この記事を読み終える頃には、変形性膝関節症に対する理解が深まり、適切な対処法を知ることができるでしょう。

1. 変形性膝関節症とは

変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減ったり、変形したりすることで、痛みや腫れ、動きの制限などが生じる病気です。加齢とともに発症しやすく、中高年、特に女性に多く見られます。軟骨のすり減りや変形は、加齢による変化だけでなく、肥満、遺伝、過度な運動、外傷などが原因となることもあります。進行すると、日常生活にも支障をきたすようになり、歩行困難や寝たきりになる可能性もあります。早期発見・早期治療が重要です。

1.1 変形性膝関節症の症状

変形性膝関節症の主な症状は痛みです。初期には、立ち上がりや歩き始めなどに痛みを感じることが多く、安静にしていると痛みが軽減するのが特徴です。進行すると、安静時にも痛みを感じるようになり、夜間痛で眠れないこともあります。また、膝の腫れやこわばり水が溜まる関節の変形なども見られます。さらに症状が進むと、正座や階段の昇降が困難になるなど、日常生活にも支障をきたすようになります。クリック音や轢音(れきおん)が鳴ることもあります。

1.2 変形性膝関節症の原因

変形性膝関節症の主な原因は加齢による軟骨の老化です。軟骨は、骨と骨の間にあるクッションの役割を果たす組織ですが、加齢とともに弾力性や水分が失われ、すり減りやすくなります。その他にも、肥満遺伝的要因過度な運動やスポーツ膝関節のケガや骨折O脚やX脚などの脚の変形関節リウマチなどの炎症性疾患なども変形性膝関節症のリスクを高めます。

要因詳細
加齢軟骨の老化により弾力性や水分が失われ、すり減りやすくなる。
肥満膝関節への負担が増加し、軟骨の損傷を促進する。
遺伝変形性膝関節症になりやすい体質が遺伝する可能性がある。
過度な運動膝関節への過剰な負荷が軟骨の損傷につながる。
外傷骨折や靭帯損傷などが原因で変形性膝関節症を発症することがある。
O脚・X脚膝関節への負担の偏りが軟骨のすり減りを促進する。
炎症性疾患関節リウマチなどが原因で軟骨が破壊されることがある。

1.3 変形性膝関節症の進行段階

変形性膝関節症の進行は、一般的に4つの段階に分けられます。

段階症状
初期(グレード1)軟骨表面にわずかな変化が見られるが、自覚症状はほとんどない。
軽度(グレード2)軟骨のすり減りが進行し、立ち上がりや歩き始めに痛みを感じることがある。
中等度(グレード3)軟骨のすり減りがさらに進行し、安静時にも痛みを感じることがある。正座や階段の昇降が困難になる。
重度(グレード4)軟骨がほとんど消失し、骨と骨が直接こすれ合うことで強い痛みや変形が生じる。歩行が困難になる場合もある。

変形性膝関節症の進行段階の診断には、X線検査が用いられます。医師はX線画像から軟骨のすり減り具合や関節の隙間などを確認し、適切な治療方針を決定します。公益社団法人 日本整形外科学会

2. 整形外科における変形性膝関節症の保存療法

変形性膝関節症の保存療法は、手術を行わずに症状の進行を抑制し、痛みを軽減し、日常生活の質を向上させることを目的としています。整形外科では、患者さんの状態に合わせて、薬物療法、リハビリテーション、装具療法、生活指導などを組み合わせた治療を行います。

2.1 薬物療法

薬物療法は、痛みや炎症を抑えることを目的として行います。内服薬、ヒアルロン酸注射、ステロイド注射などがあります。

2.1.1 内服薬

痛みや炎症を抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンなどが処方されます。胃腸障害などの副作用に注意が必要です。ロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン®)やセレコキシブ(セレコックス®)など、症状や体質に合わせて薬剤が選択されます。日本整形外科学会 変形性膝関節症

2.1.2 ヒアルロン酸注射

関節内のヒアルロン酸を補うことで、関節の動きを滑らかにし、痛みを軽減します。効果には個人差があります。1週間に1回、計5回の注射を行うのが一般的です。アルツ®やヒアロンサン®などが使用されます。公益社団法人 日本整形外科学会 変形性膝関節症

2.1.3 ステロイド注射

強力な抗炎症作用を持つステロイド薬を関節内に注射することで、炎症を抑え、痛みを軽減します。繰り返し注射すると軟骨が損傷するリスクがあるため、使用頻度が制限されます。日本整形外科学会 変形性膝関節症

2.2 リハビリテーション

リハビリテーションは、関節の機能を改善し、痛みを軽減することを目的として行います。運動療法と物理療法があります。

2.2.1 運動療法

関節可動域訓練や筋力トレーニングなどを行います。痛みを感じない範囲で、徐々に運動強度を上げていきます。大腿四頭筋の強化は特に重要です。公益社団法人 日本整形外科学会 変形性膝関節症

2.2.2 物理療法

温熱療法、電気刺激療法、牽引療法などを行います。痛みの緩和や血行改善に効果があります。公益社団法人 日本整形外科学会 変形性膝関節症

2.3 装具療法

装具療法は、関節にかかる負担を軽減し、痛みを和らげることを目的として行います。膝サポーターや足底板などがあります。

2.3.1 膝サポーター

膝関節をサポートすることで安定性を高め、痛みを軽減します。様々な種類があり、症状に合わせて適切なものを選択することが重要です。公益社団法人 日本整形外科学会 変形性膝関節症

2.3.2 足底板

足の裏に挿入する装具で、足のアーチをサポートし、膝関節への負担を軽減します。オーダーメイドのものと既製品があります。公益社団法人 日本整形外科学会 変形性膝関節症

2.4 生活指導

日常生活における注意点や運動の指導などを行います。

2.4.1 体重管理

肥満は膝関節への負担を増大させるため、適切な体重管理が重要です。食事療法や運動療法を組み合わせることで、減量を目指します。公益社団法人 日本整形外科学会 変形性膝関節症

2.4.2 運動指導

膝関節に負担をかけにくい運動を指導します。水中ウォーキングや自転車など、体重がかかりにくい運動が推奨されます。激しい運動やジャンプ動作は避けるべきです。公益社団法人 日本整形外科学会 変形性膝関節症

3. 整形外科での変形性膝関節症の保存療法のメリット・デメリット

変形性膝関節症の保存療法には、メリットとデメリットが存在します。それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、治療方針を決定することが重要です。

3.1 保存療法のメリット

保存療法のメリットは、手術をせずに痛みや炎症を抑え、膝関節の機能を改善できる点にあります。具体的には下記のようなメリットが挙げられます。

  • 身体への負担が少ない:手術と比較して、身体への負担が少ないため、高齢者や持病のある方でも比較的安全に受けることができます。
  • 入院の必要がない:多くの場合、入院の必要がなく、通院での治療が可能です。そのため、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。
  • 治療費が比較的安価:手術と比較して、治療費が比較的安価です。
  • 自分のペースで治療を進められる:症状やライフスタイルに合わせて、自分のペースで治療を進めることができます。

3.2 保存療法のデメリット

保存療法は、根本的な解決にならない場合があり、症状の進行を遅らせる効果にとどまるケースもあります。また、効果が出るまでに時間を要することもあります。具体的には下記のようなデメリットが挙げられます。

  • 効果が出るまでに時間がかかる場合がある:保存療法は、即効性のある治療法ではないため、効果を実感するまでに時間がかかる場合があります。
  • 症状が完全に消失しない場合がある:変形が進行している場合など、保存療法だけでは症状が完全に消失しないケースもあります。そのような場合は、手術が必要となる可能性があります。
  • 継続的な治療が必要:保存療法は、継続的な治療が必要となる場合が多く、通院の手間や費用がかかります。
  • 生活習慣の改善が必要:保存療法の効果を高めるためには、体重管理や運動習慣の見直しなど、生活習慣の改善が不可欠です。
項目メリットデメリット
身体への負担少ない
入院不要な場合が多い
費用比較的安価継続的な費用がかかる場合がある
治療期間自分のペースで進められる効果が出るまでに時間がかかる場合がある
効果痛みや炎症を抑え、膝関節の機能を改善根本的な解決にならない場合があり、症状が完全に消失しない場合がある
その他生活習慣の改善が必要

上記は一般的な情報であり、個々の症状や状態によってメリット・デメリットは異なります。具体的な治療方針については、医師とよく相談することが重要です。詳しくは公益社団法人 日本整形外科学会のウェブサイトなども参考にしてください。

4. 変形性膝関節症の保存療法に関するよくある質問

変形性膝関節症の保存療法に関して、患者様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

4.1 どのくらいの期間で効果が出ますか?

保存療法の効果が現れるまでの期間は、症状の重さや治療法の種類、そして個々の患者様の状態によって大きく異なります。薬物療法の場合は、内服薬であれば数日から数週間、ヒアルロン酸注射であれば数日から数ヶ月で効果を実感される方が多いです。一方、リハビリテーションや生活指導の効果は、数ヶ月から数年かけて徐々に現れる傾向があります。日本整形外科学会でも、変形性膝関節症の治療は長期的な視点が必要であるとされています。

4.2 痛みは完全に取れますか?

保存療法の目的は、痛みを軽減し、日常生活を支障なく送れるようにすることです。痛みが完全に消失するとは限りません。変形性膝関節症は進行性の疾患であるため、症状をコントロールし、進行を遅らせることが重要です。痛みが強い場合は、医師と相談の上、治療法を調整する必要があります。痛みの程度や生活への影響を考慮しながら、最適な治療法を選択することが大切です。日本リハビリテーション医学会雑誌にも、痛みのコントロールと機能改善を目的としたリハビリテーションの重要性が述べられています。

4.3 費用はどのくらいかかりますか?

保存療法の費用は、治療内容や医療機関によって異なります。健康保険が適用される治療が多いですが、一部、保険適用外の治療もあります。以下に、主な保存療法の費用目安を示します。

治療法費用目安(3割負担の場合)備考
内服薬数百円~数千円/月薬の種類や量によって異なります。
ヒアルロン酸注射1回あたり約1,500円~5,000円週1回、5週間程度の注射が一般的です。
ステロイド注射1回あたり数百円~千円程度頻回に注射することは推奨されていません。
リハビリテーション1回あたり数百円~千円程度週に数回程度行うのが一般的です。
装具療法(膝サポーター)数千円~数万円サポーターの種類によって価格が大きく異なります。
装具療法(足底板)数千円~数万円足底板の種類によって価格が大きく異なります。

上記はあくまでも目安であり、医療機関によって異なる場合がありますので、事前にご確認ください。 また、高額療養費制度を利用できる場合もあります。厚生労働省のウェブサイトで、高額療養費制度について詳しく知ることができます。

4.4 日常生活で気を付けることはありますか?

適切な体重管理と適度な運動は、変形性膝関節症の予防と進行抑制に非常に重要です。肥満は膝関節への負担を増大させるため、減量することで症状の改善が期待できます。また、ウォーキングや水中歩行などの膝に負担の少ない運動は、関節周りの筋肉を強化し、関節の安定性を高めるのに役立ちます。一方で、激しい運動やジャンプ動作などは膝関節への負担が大きいため、避けるべきです。日常生活では、正座や和式トイレの使用を控え、洋式生活を心がけることも重要です。椅子に座る際は、膝の角度が90度になるように調整し、長時間同じ姿勢を続けないようにすることも大切です。日本整形外科学会のウェブサイトでは、変形性膝関節症の予防と日常生活における注意点について詳しく解説されています。

5. 整形外科選びのポイント

変形性膝関節症の治療で後悔しないためには、適切な整形外科選びが重要です。以下のポイントを参考に、自分に合った病院を見つけましょう。

5.1 専門性

変形性膝関節症の治療は、専門知識と経験が豊富な医師のいる病院を選びましょう。日本整形外科学会が認定する「専門医」「認定医」の資格を持つ医師がいる病院は、専門性の高い治療を受けられる可能性が高いです。また、スポーツ整形外科関節外科に力を入れている病院も検討してみましょう。医療機関のホームページで所属医師の資格や専門分野を確認することができます。

5.2 実績

変形性膝関節症の手術件数や保存療法の実績が多い病院は、経験豊富な医師やスタッフがいる可能性が高いです。ホームページや口コミサイトなどで実績を確認しましょう。ただし、実績が多いからといって必ずしも自分に合うとは限らないため、他の要素も考慮することが大切です。

5.3 設備

MRIX線などの検査機器が充実している病院では、正確な診断と適切な治療計画を立てることができます。リハビリテーション施設が併設されている病院であれば、手術後や保存療法中のリハビリもスムーズに行えます。ホームページなどで設備を確認しましょう。

5.4 治療方針

手術を積極的に勧める病院もあれば、保存療法を重視する病院もあります。自分の希望に合った治療方針の病院を選びましょう。セカンドオピニオンを活用して、複数の医師の意見を聞くことも有効です。患者中心の医療を掲げている病院であれば、患者の希望を尊重した治療を受けられる可能性が高いでしょう。

5.5 アクセス・通院のしやすさ

自宅や職場から通いやすい病院を選ぶことは、治療を継続していく上で重要です。通院にかかる時間や費用、待ち時間なども考慮しましょう。

5.6 その他のポイント

5.6.1 コミュニケーション

医師やスタッフとのコミュニケーションが良好な病院を選ぶことは、安心して治療を受ける上で重要です。丁寧に説明してくれる質問しやすい雰囲気の病院を選びましょう。初診時のカウンセリングや診察時の対応をよく観察することで、病院の雰囲気を掴むことができます。

5.6.2 費用

治療費や入院費は病院によって異なります。健康保険が適用される治療でも、初診料再診料検査費用などは自己負担となります。事前に費用を確認し、予算に合わせて病院を選びましょう。

5.6.3 口コミ・評判

インターネット上の口コミサイトや知人からの評判も参考になります。ただし、口コミはあくまでも個人の意見であるため、参考程度に留め、最終的には自分で判断することが大切です。

項目確認事項
専門性専門医・認定医の有無、専門分野
実績手術件数、保存療法の実績
設備MRI、X線、リハビリテーション施設
治療方針手術重視か保存療法重視か
アクセス自宅や職場からの距離、通院時間、費用
コミュニケーション医師やスタッフの対応、説明の丁寧さ
費用初診料、再診料、検査費用、手術費用
口コミ・評判インターネット上の口コミ、知人からの評判

最適な整形外科選びのために、公益社団法人 日本整形外科学会のウェブサイトも参考にしてください。

6. まとめ

この記事では、変形性膝関節症に対する整形外科での保存療法について解説しました。変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減り、炎症や痛みを引き起こす病気です。進行すると日常生活に支障をきたす場合もありますが、初期段階であれば保存療法で症状の改善が期待できます。

保存療法には、薬物療法、リハビリテーション、装具療法、生活指導など様々な方法があります。それぞれの治療法にはメリット・デメリットがあり、患者さんの症状やライフスタイルに合わせて最適な方法を選択することが重要です。例えば、痛みを抑えるには薬物療法が有効ですが、根本的な解決にはリハビリテーションによる筋力強化が不可欠です。また、体重管理や適切な運動も症状の進行を抑制する上で重要です。

保存療法は手術をせずに症状を改善できる可能性がある一方、効果が出るまでに時間を要する場合や、完全に痛みを取り除けない場合もあります。どの治療法を選択するかは、整形外科医とよく相談し、ご自身の状況に合った方法を見つけることが大切です。膝の痛みでお困りの場合は一度当院へご相談ください。