「五十肩にヒアルロン酸注射を打ったのに、痛みが改善しない…」そんな悩みをお持ちではありませんか? 五十肩の治療としてヒアルロン酸注射を選択する方は多くいらっしゃいますが、実際には効果を実感できないケースもあるようです。この記事では、五十肩の原因やヒアルロン酸注射の効果・リスク、そして注射が効かない理由について、医師の監修のもと分かりやすく解説します。五十肩の痛みに悩まされている方、これからヒアルロン酸注射を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
1. 五十肩とは?
五十肩は、40代後半~50代に多く発症することからその名が付けられていますが、医学的には「肩関節周囲炎」と呼ばれています。肩関節周囲の組織に炎症が起こり、肩の痛みや動かしにくさを生じる病気です。日本整形外科学会によると、中高年の約5%にみられるといわれ、比較的頻度の高い疾患といえます。
1.1 五十肩の症状
五十肩の症状は、炎症が起きている部位や進行度合いによって異なりますが、一般的には次のようなものが挙げられます。
1.1.1 痛み
- 肩関節周囲の痛み:特に夜間や明け方に強く、睡眠を妨げられることもあります。
- 運動時痛:腕を動かしたときに痛みが強くなります。
- 安静時痛:安静にしていても痛むことがあります。
1.1.2 運動制限
- 腕を上げにくい:髪を結ったり、服を着たりする動作が困難になります。
- 腕を後ろに回せない:帯を結んだり、後ろのポケットに手を入れたりする動作が困難になります。
- 腕を外側に広げにくい:洗濯物を干したり、高いところの物を取ったりする動作が困難になります。
五十肩は、自然に治癒していくこともありますが、適切な治療を行わないと、痛みが長引いたり、関節の動きが悪くなったりする可能性があります。そのため、早期に医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
1.2 五十肩の原因
五十肩の明確な原因は解明されていませんが、加齢に伴う肩関節周囲の組織の変性が関係していると考えられています。
考えられる要因としては、以下のようなものが挙げられます。
要因 | 詳細 |
---|---|
加齢 | 加齢に伴い、肩関節周囲の筋肉や腱、靭帯などの組織が老化し、柔軟性や弾力性が低下することで、炎症が起こりやすくなると考えられています。特に、40代以降は、肩関節周囲の組織の血流が悪くなりやすく、老化が加速しやすいとされています。 |
肩関節の使い過ぎ | スポーツや仕事などで肩関節を酷使することで、肩関節周囲の組織に負担がかかり、炎症や損傷が起こりやすくなると考えられています。特に、野球やテニス、バレーボールなどのオーバーヘッドスポーツや、重い物を持ち上げる作業などは、五十肩のリスクを高めるとされています。 |
肩関節の外傷 | 転倒や衝突などで肩関節を強打することで、肩関節周囲の組織に損傷が起こり、炎症や痛みが生じることがあります。このような外傷がきっかけで、五十肩を発症することもあります。 |
糖尿病などの基礎疾患 | 糖尿病などの基礎疾患があると、血液循環が悪くなったり、組織の修復機能が低下したりすることで、五十肩を発症しやすくなると考えられています。また、甲状腺疾患や自己免疫疾患なども、五十肩のリスク因子として挙げられています。 |
ホルモンバランスの変化 | 更年期にさしかかると、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が減少します。エストロゲンには、骨や軟骨の代謝を促す働きがあるため、分泌量が減少することで、骨や軟骨がもろくなり、五十肩を発症しやすくなると考えられています。 |
遺伝的要因 | 家族に五十肩になった人がいる場合、遺伝的に五十肩になりやすい可能性があります。 |
これらの要因が複合的に作用して、五十肩を発症すると考えられています。加齢による変化は避けられませんが、日頃から肩関節周囲のストレッチや筋力トレーニングを行うことで、五十肩の予防に繋がると考えられています。また、糖尿病などの基礎疾患がある場合は、適切な治療を受けることが大切です。
2. ヒアルロン酸注射とは?
ヒアルロン酸注射とは、変形性関節症などの関節痛の治療に使われる注射です。関節内に直接、ヒアルロン酸を注入することで、痛みや炎症を抑え、関節の動きを滑らかにする効果が期待できます。 変形性関節症は、関節軟骨がすり減ったり、関節の炎症が起こったりすることで、関節に痛みや腫れ、動きの悪さなどが生じる病気です。
2.1 ヒアルロン酸注射の効果
ヒアルロン酸は、私たちの体内にもともと存在する物質で、関節軟骨や皮膚などに多く含まれています。高い保水力を持つのが特徴で、関節内では潤滑油のような役割を果たし、関節軟骨への衝撃を吸収したり、動きを滑らかにしたりしています。
しかし、加齢や肥満、過度な運動などによってヒアルロン酸は減少していきます。その結果、関節軟骨がすり減りやすくなり、炎症が起こりやすくなることで、関節痛や関節の動きの悪さが引き起こされます。
そこで、ヒアルロン酸が不足している関節内に直接、ヒアルロン酸を補う治療法として行われるのがヒアルロン酸注射です。ヒアルロン酸注射を行うことで、関節内のヒアルロン酸の濃度を高め、潤滑作用や衝撃吸収作用を改善することで、痛みや炎症を抑え、関節の動きをスムーズにする効果が期待できます。
2.2 ヒアルロン酸注射のリスクと副作用
ヒアルロン酸注射は、一般的に安全性の高い治療法とされていますが、全くリスクや副作用がないわけではありません。注射部位の痛み、腫れ、発赤、熱感、内出血などがみられることがあります。これらの症状は、ほとんどの場合、一時的なもので、数日~1週間程度で改善していきます。
また、頻度はまれですが、感染症、アレルギー反応、神経障害などの重篤な副作用が起こる可能性もあります。以下に、ヒアルロン酸注射のリスクと副作用についてまとめます。
2.2.1 注射部位の反応
- 痛み
- 腫れ
- 発赤
- 熱感
- 内出血
2.2.2 その他
- 感染症
- アレルギー反応
- 神経障害
万が一、ヒアルロン酸注射後に体に異常を感じた場合は、速やかに医療機関を受診するようにしてください。
3. 五十肩にヒアルロン酸注射が効かない理由
五十肩は自然に治る病気とされていますが、痛みが長引いたり、肩の動きが悪くなったりすることで、日常生活に支障をきたす場合もあります。そのため、痛みの緩和や肩の動きを改善するために、ヒアルロン酸注射などの治療を行うことがあります。しかし、すべての人にヒアルロン酸注射が有効であるとは限りません。ここでは、五十肩にヒアルロン酸注射が効かない理由や、効果が出にくいケースについて詳しく解説します。
3.1 効果が出にくいケース
五十肩にヒアルロン酸注射が効かない理由としては、以下の様なケースが考えられます。
3.1.1 炎症が強い場合
五十肩の初期段階では、肩関節周囲の組織に強い炎症が起こっていることが多く、これが痛みの主な原因となっています。ヒアルロン酸は、関節の動きを滑らかにする効果は期待できますが、炎症を抑える効果は限定的です。そのため、炎症が強い場合には、ヒアルロン酸注射単独では十分な効果が得られない可能性があります。このような場合は、炎症を抑える効果の高いステロイド注射や内服薬を併用することが有効となることがあります。
3.1.2 関節の拘縮が進んでいる場合
五十肩が進行すると、肩関節周囲の組織が線維化し、関節が硬くなって動きが悪くなる拘縮と呼ばれる状態になることがあります。ヒアルロン酸注射は、関節の動きを滑らかにする効果はありますが、既に硬くなってしまった関節の拘縮を改善する効果は限定的です。このような場合は、ヒアルロン酸注射に加えて、関節可動域訓練などの理学療法を並行して行うことで、効果が期待できます。
3.1.3 他の疾患が原因となっている場合
肩の痛みやしびれは、五十肩以外にも、頸椎椎間板ヘルニアや胸郭出口症候群などの疾患が原因で起こることもあります。これらの疾患が原因で肩の痛みやしびれが生じている場合、ヒアルロン酸注射を行っても効果は期待できません。他の疾患の可能性も考慮し、医師の診察を受けることが重要です。
3.2 ヒアルロン酸注射以外の治療法
五十肩の治療法は、ヒアルロン酸注射以外にも様々なものがあります。症状や状態に合わせて適切な治療法を選択することが大切です。主な治療法は以下の通りです。
治療法 | 内容 | 効果 |
---|---|---|
理学療法 | 肩関節周囲の筋肉の柔軟性を高めたり、関節の動きを改善したりする運動療法を行う。 | 肩の痛みを軽減し、関節の動きを改善する効果が期待できる。 |
薬物療法 | 痛みや炎症を抑えるために、鎮痛剤や消炎鎮痛剤などを内服する。 | 痛みの軽減や炎症の抑制効果が期待できる。 |
手術 | 他の治療法で効果が得られない場合に、関節鏡を用いて癒着した組織を切除したり、関節を広げたりする手術を行う。 | 痛みの軽減や関節の動きを改善する効果が期待できるが、身体への負担が大きい。 |
五十肩は、適切な治療を行えば多くの場合、改善する疾患です。自己判断で治療法を決めずに、医師に相談し、適切な治療を受けるようにしましょう。
4. 五十肩のヒアルロン酸注射に関するよくある質問
4.1 ヒアルロン酸注射は痛いですか?
ヒアルロン酸注射は、注射針を刺す時に多少の痛みを伴います。痛みの感じ方には個人差がありますが、多くの場合、我慢できる程度の痛みと言われています。痛みが心配な方は、事前に医師に相談してみましょう。注射の前に麻酔クリームを使用することも可能です。
4.2 ヒアルロン酸注射は保険適用ですか?
五十肩に対するヒアルロン酸注射は、保険適用の場合と、保険適用外の場合があります。保険適用となるかどうかは、使用するヒアルロン酸の種類や医療機関によって異なります。事前に医師に確認することをおすすめします。
- 保険適用となる場合:
一般的に、関節内の潤滑作用を改善する目的で使用されるヒアルロン酸注射は、保険適用となることが多いです。 - 保険適用外となる場合:
炎症を抑える効果や組織の修復を促進する効果を期待して使用されるヒアルロン酸注射は、保険適用外となることが多いです。自由診療となるため、費用は医療機関によって異なります。
詳しくは厚生労働省のウェブサイトや、日本整形外科学会のウェブサイトなどを参照してください。
4.3 どのくらいの頻度でヒアルロン酸注射を受ければいいですか?
ヒアルロン酸注射の頻度は、症状の程度や使用するヒアルロン酸の種類によって異なりますが、一般的には1週間に1回、合計3~5回程度行われます。その後は、症状の改善状況に応じて、医師と相談しながら注射の頻度を調整していきます。
効果の持続期間には個人差がありますが、一般的には数ヶ月程度と言われています。効果が切れてきたと感じたら、再度注射を行うことも可能です。ただし、ヒアルロン酸注射は対症療法であり、根本的な治療ではありません。五十肩の根本的な治療には、リハビリテーションなどによる肩関節の柔軟性や筋力の回復が重要です。
4.4 ヒアルロン酸注射以外の治療法にはどんなものがありますか?
五十肩の治療法には、ヒアルロン酸注射以外にも様々な方法があります。主な治療法としては以下のものがあります。
4.4.1 薬物療法
- 消炎鎮痛剤:
痛みや炎症を抑える薬です。内服薬、外用薬、注射薬などがあります。 - 筋弛緩剤:
筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減する薬です。
4.4.2 理学療法
- ストレッチ:
肩関節の柔軟性を改善する運動です。 - 筋力トレーニング:
肩関節周囲の筋力を強化する運動です。 - 温熱療法:
患部を温めて、血行を促進する治療法です。
4.4.3 その他
- 神経ブロック注射:
痛みを感じている神経に麻酔薬を注射し、痛みを遮断する治療法です。 - 手術療法:
他の治療法で効果が得られない場合に、行われることがあります。
どの治療法が適しているかは、症状の程度や患者さんの状態によって異なります。医師とよく相談して、最適な治療法を選択することが大切です。
5. まとめ
五十肩は肩関節周囲の炎症によって引き起こされる病気で、ヒアルロン酸注射は炎症を抑え、関節の動きを滑らかにする効果が期待できます。しかし、五十肩の原因や症状の程度は人それぞれであり、すべての人に効果があるわけではありません。効果が出にくいケースとしては、炎症が強い場合や、肩関節周囲の組織が硬くなってしまっている場合などが挙げられます。 ヒアルロン酸注射の効果が感じられない場合は、理学療法や薬物療法など、他の治療法を検討する必要があります。五十肩の治療法は多岐に渡るため、自己判断せずに、医師に相談し適切な治療を受けるようにしましょう。